「夏期休暇」
それは大学生にとって、とても大切な期間である。多くの大学生はこの夏期休暇の間に、アルバイト、資格の勉強、ボランティア、恋愛、友人らとの交流など、様々なイベントを通して自分達を学生から社会人へと成長させている。意識の高い()人たちはニ年生のこの時期から就職活動も始めているらしい。
…が、ただ一人ここに全く成長しようともしていない自堕落な女子大生がいる。
私だ…。同級生たちが忙しくも充実した輝かしい毎日を送っているこの長い夏休みに、私は今日もいつも通りパソコンの前で、いつも通り行きつけのまとめサイトで、いつも通り下らないスレッドを漁っている。
「…ふふっ、ワロタwwwwwwっと。」カタカタ
同じ大学ニ年生なのに、どこで間違えてこんなに差が出てしまったのか…。
一年生の時の私の情熱はどこに行ってしまったのか…。
大学生では一念発起して友達も恋人も作ろうと思っていた私の決心は何だったのか…。
このまま惰性で大学生活を送り、ぼっちで周りのコネもなく、厳しい就職活動に勝てるのだろうか…。
もしかするとこのまま一生彼氏も出来ず、結婚も出来ず、パパとママや親戚のオバサンに「お仕事は?」「早く結婚したら?」などと愚痴を延々と聞かされながらおばあちゃんになって死ぬまで生きていくのだろうかうああああああああああああああああああああああああ……
いかん…いかん、危ない危ない危ない。将来の漠然とした不安に押し潰されるところだった…。
そうだ、この話はもうやめよう。悩んでいても仕方がない。忘れよう。そうだ、今は夏休み。私は私なりに夏休みを楽しもうじゃないか。リア充なんてアウトドアを拗らせて日射病やら熱中症になってしまえばいいんだ。
ぐぐぅ~……
きゅるるる……
おなかすいたな…。そうだ、こんなときこそアレをやろう。ネットとゴロゴロすること以外の私のもう一つの趣味、…ていうか嗜好かな?
私は重たい腰を上げてキッチンへ行き、私の秘密が詰まっている箱を開けた。
その箱というのはもちろん………冷蔵庫だ。
やっぱり一人暮らしは良い。部屋に誰かが勝手に入ってくるわけでもなく、とっておいたおやつが勝手に食べられる心配もない。それにいつでもオナ…
さて、冷蔵庫の中身は…
「豆腐が四丁、ひき肉がお徳用で一パック、玉ねぎ三つ、ねぎが二本、牛乳パック二本、タマゴが六個、ピーマンが三つ、ニンジンが大きいのが二本、もやしがニ袋、キャベツが半分、豚肉切り落としがお徳用で一パック、ブ〇ガリアヨーグルトが一つ、コンビニのジャンボプリンが二つ、その他諸々調味料など…。」
とても一人暮らしの女が食べる量だとは思えない。
あくまでも普通の人の場合の話だが…。
この食材で何を作ろうか…。余談だが私は大学に入った時から始めた一人暮らしで、今では大抵の料理を自分で作れるようになった。その点では一人暮らしを許してくれた親には感謝している。そして、コレに完全に目覚めたのは一人暮らしを始めてしばらくたってからである。
「…よし、今日は麻婆豆腐と炒飯と肉野菜炒めにしようかな。」
…我ながら女気の無い料理だとは思うが、仕方ないね。私には料理を振る舞う友達も彼氏もいないのだ。
「たしか冷凍庫にご飯が…」
これも一人暮らしの女の食べる量だとは到底思えない。お米が入った大きめのタッパーがざっと見ても七~八個は並んでいる。私はその中の三つを手に取り、冷凍庫を閉じた。
さぁ、ここで私のお料理スキルをお披露目……するつもりだったが、いい加減本題入っていかないといけない気がするのでここでは割愛させてもらう。
…私はいったい誰に向かって何を言っているのだろうか。
…出来た。我ながら惚れぼれする出来だ。あとはこの料理を一緒に食べてくれる人がいればなぁ……はぁ。
「いただきます。」
あっ、そうだ。
私は短パンをずり下ろして、薄いTシャツとパンツ1枚になった。こっちの方がやり易いしね。
まずは炒飯を一口。うん、おいしい。米はベタつかずパラパラで、玉子はふんわり、だが油っこ過ぎずいくらでも入りそうだ。
次に肉野菜炒めを頬張る。やっぱり肉野菜炒めはシンプルにオイスターソースで炒めるに限る。ご飯もとい炒飯が進む。
そして麻婆豆腐。これは………美味しいけど少し味付けを辛くし過ぎた。牛乳牛乳…。
ごく…ごく…ごく…。
よし、もう大丈夫。私は引き続きテーブルの上の料理を平らげにかかった。
もぐもぐ、しゃきしゃき、ごくごく…。
肉野菜炒めを食べ終わった。あれだけあった料理は今はもう半分以上が私のお腹の中に入っている。残りの炒飯と麻婆豆腐もあと少しでこのお腹の中に全て吸い込まれてしまうのだろう。
私はふと、自分のお腹を触ってみた。
むにむに ぷよぷよ
お腹の表面は温かいパンの生地みたいで触っていて気持ちいい。だがそのすぐ向こうにはこの柔らかいお腹とは対照的で、押してもあまりへこまない、土がギチギチに詰まっている土嚢のような感触を感じた。
普通の人から見れば私のお腹はもう十分膨れていて、かなりぼってりとしているがまだまだ序の口だ。物が入るスペースは十分にある。
はふっはふっ、もぐもぐ。ぱくぱく。
私は麻婆豆腐をおかずに炒飯を順調なペースでかき込んでいく。時折牛乳を飲みながら辛さを中和し、着々と食べ進めていく。
「ふぅ…、炒飯完食っと…。」
先ほどの肉野菜炒めと炒飯を同じ分量で食べていたせいか、炒飯が麻婆豆腐より少し早く無くなってしまった。
ご飯新しく炊こうかな?…いや、めんどくさい。牛乳と一緒に食べちゃおう。
はふはふ、ちゅるるんっ。はふはふ。
私は麻婆豆腐の最後の一口を飲み込んだ。
「ごちそうさまでした。…げぇふぅ。」
ついさっきまでテーブルの上に鎮座していた3皿のデカ盛り料理は、全て私の胃袋の中に吸収されてしまった。Tシャツを押し上げ、パンツをずり下げて、その間にどっしり構えて自己主張しているパンパンに膨らんだお腹が全てを物語っている。お腹を撫で回して余韻に浸りつつ、私はテーブルの上にまだ中身が半分ほど残っている2本目の牛乳パックに私は手を伸ばした。やることはもちろん、一気飲みである。
ごっ…ごくっ……ごくごく…ごくごく…ごっ…ごくごく……ごくっ……
食べ物でパンパンに膨らんで大きくなったお腹がさらに張り出していく。
ごぎゅっ……ごっ…ごくごくごく……ごくっ…ごく……
まんまるに膨れ上がったお腹に牛乳が流れ込んでくるのが分かる。牛乳が食道を通る度にお腹の中にジャバジャバ音をたてて流れていき、その度にじわりじわりとお腹が大きく、硬くなりながら膨らんでいく。貯水タンクにでもなった気分だ。
ミツツボアリという、自らの胃袋に食料の蜜を貯蔵するアリの仲間がいるらしいが、彼らも同じような気分で仲間たちが集めてきた蜜を全て飲み干し、自らのお腹の中に貯め続けているのだろうか。
…なんてことを考えながらパックの牛乳を全て飲み干した。
あらためて自分のお腹を触ってみる。まるで大玉のスイカを丸呑みにしたかのような丸々としたお腹。きっとこの状態で電車に乗ったら間違いなく席を譲られるレベルだろう。食前のぷよぷよだったお腹とは比べ物にならないくらいにぱっつんぱっつんに張り詰めている。お腹をつまんでも表面の皮が軽く伸びるだけで、かつてのパンの生地のような柔らかさは無い。
「さて、デザートデザート…。」
これだけ食べてまだ入るのか…。自分で自分に驚くというか呆れるというか…。デザートのことを考えると、お腹の中に女の子の特権「別腹」が発動したのが手に取るように分かった。ちなみに私はどんなにお腹がいっぱいの時でも夕食後のデザートは欠かしたことは無い。もはや習慣と言っても良いだろう。こんなことではなく、予習と復習と宿題を習慣付けていれば今頃……
いかんいかん、また将来の漠然とした不安に押し潰されるところだった。さぁ、今は冷蔵庫のプリンだ。甘いもの食べて元気だそう。このプリンは1つ200g。普通のぶりっ子女子学生たちなら1つで事足りることだろう。だが、私は敢えて2つ一気に食べるつもりだ。
プッチン プッチン
プリンを2つお皿にプッチンして盛る。う~ん…何だか横から見るとおっぱいみたいだ。……仮にも女がこんなこと言って恥ずかしくないのだろうか…。
ふと、その2つの山と自分の物を比べてみる。
「………勝った…。」
私は自他共に認めるコミュ障根暗非リア充だが、一応胸はある。顔だってそこまでは、そこまでは悪くないはずだ。根暗といじめられたことはあったけど、ブスと言われたことはないし。だからきっと人並みにお洒落して、人並みに化粧をして、人並みにハキハキ喋れれば、きっと……。
ノーブラのため若干垂れてはいるが、年相応の張りのある豊満な胸だ。まぁ今はその胸の下に妊婦も真っ青な大きさの太鼓腹がドーンと前に突き出ているのだが。
ぱくり
プリンを一口。甘い。やっぱり私も女なのだ、甘い物を食べると自然と顔がほころんでしまう。そしてスプーンを動かす手もどんどん速くなる。流石は「別腹」だ、プリンを頬張る度にお腹が一回り、また一回りとぐいぐい膨らんでいくのを感じるが、苦しいという感じは全くない。むしろこのお腹が張り詰めていく感触が心地よいくらいだ。
…まぁそれは私の変態的な嗜好の賜物だが。
お皿の上の双丘は2つとも私の胃の中に収まった。パンパンに膨れ上がったお腹を揺らしてみると、お腹の揺れに合わせて「チャポン」「タポン」と音がする。パンパンに膨らんだお腹の感触とこの少しだけエッチな感じの音が、私の中の何かを刺激した。
その時は少しハイになっていたのだろう。私は自分のお腹を撫で回しながら横から指で押して確認した。
「まだ入る」
せっかくだし、今日は限界まで食べ続けてみよう。
私は再び冷蔵庫を開けてみる。中にはもう調味料と明日の朝ごはんのヨーグルトしか残っていない。
さっきまでこの中にぎゅうぎゅうに詰まっていた食材が今は全部私の中に…。私はでっぷりと膨らんだ自分のお腹を撫でながら、しばし謎の征服感に浸った。
もう冷蔵庫は空っぽだ。他に何か無いかなぁ…。普通の人ならばここで大人しく止めるのだろうが、今の私は乗りに乗っている。私は戸棚の方も調べてみることにした。
「よいしょ……ていうか重っ!」
大きなお腹を抱えて立ち上がったとき、改めて自分のお腹の重さに驚く。このまんまるに膨れ上がったお腹にはいったい何キロの食べ物が詰まっているのだろうか。料理の計量をしなかったことを少し後悔する。
「蕎麦か……。」
戸棚を探していると、干しそばが出てきた。これならのど越しも良くペロリと食べられることだろう。薬味は……ゴマと生姜だけでいいか。ネギは全部食べちゃったし。
私は早速鍋にお湯を沸かし、そばを袋から取り出した。キッチンに張り出したお腹がつっかえているため、軽くキッチンに乗り出さなくてはいけないので猫背になる。あっ、これもう賞味期限近いな。全部茹でちゃえ。
良く見ていなかったが、そばは10束くらいだったと思う。おそらく1キロか、それよりちょっと多いくらいだろう。これくらいならまだ余裕で食べられる。
しかし、それは詰めが甘い選択だった。その時の私は気付いていなかったのだ。乾燥した干しそばは、茹でると3倍ちかくにまで膨張するということに…。
「よし、4分経った。」
私はそばを鍋からざるに揚げ、冷たい水ですすいでいく。この一手間が大事なんだよね、この一手間が。
「……ていうかこんなに重かったっけ…?さっきはそうでもなかった気が…。」
私のような非力な乙女の力では、全てをざるに乗せられないくらい重い。しかも今は妊娠中なのであまり腰に力が入らない。…まぁこのお腹の中には普通の赤ちゃんの倍以上はあろうかという量の食べ物が目一杯詰まっているだけで本当に赤ちゃんが入っているわけではないのだが……。
「改めまして、いただきます。」
ちゅるちゅる ちゅるん ごっくん
夏の暑さを打ち消すように、冷たいざるそばが口の中から食道を冷やしていく。これならいくらでもいける気がする。
というか改めて見ると、一袋全部を茹でたそばの山は圧巻だ。なんていうかこう、威圧感がある。「貴様に我輩の全てを食すことが出来るのか?」とでも言わんばかりに、ざるの上で悠然と構えている。
そして、私はそのそばの山に親の仇と言わんばかりの勢いで食らい付いていく。実際そばに親を殺されたわけでもないし恨んでいるわけでもないのだが、私は一心不乱にそばをすすり続けた。
「あれれ?おかしいなぁ…。……ゲップ。」
もう茹でる前くらいの量は食べてるはずなのに、少しも減っているようには見えない。あぁ、干しそばって茹でると意外に増えるんだなぁ。これはちょっと計算外だった。…ちょっとだけお腹が苦しくなってきたけど、まだ大丈夫だよね…?
ずっ……ちゅる……ちゅるる……
飽きてきた…。さっきからそばしか口に入れていない。こんなことになるなら最初のフルコースと一緒に作れば良かった…。
テレビで大食いの選手の人が言っていた話だが、大食いで一番辛いのは同じものを延々と食べ続けることらしい。様々な種類の食べ物が並ぶバイキングなどは味や食感に退屈しないためいつも以上に食べることが出来るようだが、同じものを食べ続けるとなればもはや作業と言っても過言ではないレベルのようだ。食べるのを楽しめる時とそうでない時とでは記録も大幅に変わってくるそうだ。
…まさに今の私である。
さっきまではお皿に盛られた料理を食べることを楽しんでいたのに、今は目の前に盛られたそばの山を全て食い尽くすことしか考えていない。ああ…さっきの麻婆豆腐が恋しいよ…。私は、プログラミングされた仕事を忠実にこなすロボットのようにそばをすすり続けた。
「はぁ……はぁ……ゲプ。」
さっきから小さいゲップが頻繁に出てくるようになった。そしてお腹はというと、さっきよりもさらに大きくなり、カチカチに硬くなっている。お腹がパンパンに膨らみすぎて、おへそがポコンと裏返り出べそになってしまった。普段は出べそではないので触るとくすぐったくて変な感じだ。
私はおもむろにお相撲さんみたいにお腹を「バン!バン!」と叩いてみた。すると「タン!タン!」と、岩を叩いたような乾いた音が返ってくる。そして叩く度にお腹の中で「バイーン バイーン」と叩いた振動が響いているのが分かった。
そばの山制覇まであとわずか。
「ゲプ、よーしあと少しだ!気合い入れてゲフッ……いくぞー!……ゲェップ。」
ゲップが止まらないため、綺麗に締まらない…。
「はっ……はっ……はぁっ…ゲフッ…はぁ」
苦しい…。胃袋がこれでもかと言わんばかりに食べ物を詰め込まれて膨張し、肺や他の臓器を圧迫しているのがわかる。おそらくこの丸々とした大きなお腹の中身は、上から下まで全てが限界まで膨らんだ胃袋なのだろう。深呼吸が出来ないくらいに膨張し、張り詰めている。お腹が大きくなり過ぎてちゃんと椅子に座れないため、軽く仰け反る姿勢になる。
あと2、3口……いや、少し多めのあと一口がどうしても入らない。
残り一口のミニサイズになってしまった小さなそばの山は、それでもなお私を見据えている。その小さくなった山は勝利を確信したかのように、お腹をさすりながら浅い息をしている私を悠々と見下ろす。
(苦しい…。もう止めたい…。もう一口も入んないよぉ…。)
狭いアパートの一室、冴えない女が孤軍奮闘し己の限界を思い知る。お腹をさすりながら少しでも体が楽になることを願う。
……そうだ、ラマーズ法。あの妊婦さんが出産するときの呼吸法なら今の私に応用出来るかも知れない。今はこの苦しさから逃れたい一心だ。
ヒッ ヒッ フー ヒッ ヒッ フー
深く息を吸えないので苦しいことには変わりないが、多少はマシになった気がする。よし、このまま続けて…
ヒッ ヒッ フー ヒッ ヒッ …ゲェップ
……忘れていた。このゲップが止まらないのだ。今のゲップで呼吸がつまったため、余計に苦しくなってきた。もう打つ手はないのか…。苦しい…。こんなことになるのなら、さっきのプリンで満足してやめにすればよかった。このままではお腹がはち切れてしまいそうだ。
その時、私の頭の中を悪い考えが掠めた。
もういっそのこと全て吐き出してしまえば楽になるのではないか…?
…いや、ダメだ。それだけは絶対に許されない。今私のお腹の中にギチギチに詰め込まれた食べ物たちは、元はと言えば私たちと同じ生き物だったのだ。最後まで生き延びて子孫を残していきたいと思っていたのに、人間の都合で殺されて人間のための餌となったのだ。私のこの丸々と膨れ上がった太鼓腹の中には幾つもの命が入っていて、その命が胃袋で消化されやがては私の血肉となるのだ。たくさんの罪の無い命を屠ってきた私には、その全てを吸収する義務がある。決して一つ足りとも無駄には出来ないのだ。
私は意を決して最後の一口に取り掛かった。
「よし、いくぞウグッ!」
もう遅かった。お皿を自分の近くに寄せるために勢いよく身を乗り出した結果、破裂寸前まで膨れ上がったお腹を机に押し付け、圧迫する形になってしまった。
普通に考えれば、こんなに大きなお腹で身を乗り出せば机に引っ掛かる事くらいすぐにわかるだろう。だが私は目の前の食べ物のことで頭がいっぱいだったのだ。
(も、もうだめ!出ちゃう!)
別に何かと戦っていたわけではないが、私は敗北を確信した。
「う、うっぷ…。……うげっ、オゲゲゲエ゙エ゙エエエェェェェェェェェェェップ!!!」
……こんなに大きな声(今のはゲップだが)を出したのは何年ぶりだろうか。いや、子供の頃から大人しい性格の私はもしかするとこれが今までの人生で一番の大声なのかも知れない。もし窓を開けっぱなしにしていたら、誰かが怪獣でも出たのかと驚いて通報してもおかしくないほどの音量だった。警察や野次馬が来て、それが食べ過ぎで限界まで腹を膨らませた女子大生のゲップだったと知ったらどんな反応をするのだろうか。
時すでに遅しだが、今頃になって恥ずかしくなり顔が熱くなってきた。耳と頬っぺたが赤くなってるのは鏡を見なくても分かる。
だが幸い、このはち切れんばかりに膨らんだお腹の中身、つまりはゲロを部屋中に撒き散らすという最悪の事態は避けられた。
「ふぅ、ごちそうさまでしたぁ。お腹ぱんっぱんだぁ…。」
私の目の前の料理は全て消え去り、その代わりに目の前にはパーティーなどで使うような大きなお皿が四重の塔を作った。かなりの大きさの大皿で1枚だけでも机の半分近くを占めていたため、食べ終わった皿から順に重ねていったのだ。
「意外と……まだ入るかも……?」
私はギチギチに張りつめた脇腹を軽くつついてみる。もちろん硬くなった私のお腹には全く歯が立たなかったが、先程までのような息苦しさは無くなっている。さっきの乙女の物とは思えない大ゲップから考えるに、どうやら私は食べ物を食べる時に空気も人より多く飲み込んでしまう体質らしい。そのためあのゲップでお腹の中の空気が抜けた今、少しばかり余裕が出来たらしい。
「よいしょっと…。ふぅ…ふぅ…」
私は妊婦を軽く超えるサイズにまで成長したお腹を両手で抱えながら、お腹を支えるため軽く仰け反りつつ、よちよちと台所まで歩いていった。
ここまで見れば私が何をしようとしているか分かるだろう。そう、この中にさらに食べ物を詰め込もうとしているのだ。自分でも驚きだが、まだ入るのだ。もっと、もっと詰め込んでお腹をパンッパンになるまで膨らませてみたい…。もっともっとたくさん食べたい…。
さっきあれだけ苦しいだの破裂するだの言っていたのに、また同じことをしようとしている。同じ失敗を何度でも繰り返す、まさにダメ人間である…。
「ふぅ…ふぅ…何かないかなぁ…。」
お腹が大きくなりすぎてしゃがむことが出来ないので、上段の棚を探す。
ホットケーキミックス、小麦粉などなど…。しかしこんなボテボテした太鼓腹では調理もまともに出来ないだろう。何かもっと手軽なものがあれば…。
あった。ペ〇ングソース焼きそば超大盛り…。これならお湯を入れるだけで出来るし、まぁまぁお腹にも溜まるだろう。私は早速ポットにお湯を沸かし、容器に注ぎいれた。焼きそばが戻るのを待つ間、私は軽くベッドに横になった。
「ハァ……ハァ………んふぅ……。」
ふと目線を下ろすと、肌色の大きな半円が日の出のように顔を出した。私の呼吸に合わせて広がったり縮んだりして上下している。
「すうぅー……。」
私は限界まで息を吸い込んでみた。すると、肌色の半円は今までよりもさらに大きく膨らんだ。大食いを鍛えてもっと食べ物を食べられるようになったらここまで大きくなるのか…。今よりもずっと量も多くなるだろうから、そんなに食べたらお腹が重くなってひっくり返って動けなくなっちゃうんじゃないかな…。私はそんな妄想をしながら焼きそばの出来上がりを待った。焼きそば…?
「あっ!いけない、忘れてた!」
私は急いでベッドから起きて台所へ向かった。急いで歩いているため、歩行に合わせて私のお腹がダッポンダッポン揺れまくっている。私の動きに少し遅れてついてくるため、お腹が暴れる反動を吸収しながら歩いていく。…急いでいるとは言っても、膨らんだお腹を左右に大きく揺らしながら、ペンギンのようによちよちと歩いている今の私の姿は客観的に見れば非常に滑稽な物に見えるのだろう…。
予定の時間を過ぎた焼きそばは、麺が少し伸びていた。いや、少しと言っても元が超大盛りであるため、目に見えて量が増えてる気がする。でもそれは今の私にとっては好都合だ。
「ソース入れてと…。」
出来た。だがまだ完成ではない。ここで取り出したるはおたふくソースと塩コショウだ。大盛りのカップ麺などは、どうしても付属の調味料だけでは物足りない事がある。さっきも言ったけど料理にはこの一手間が大事なんだよね、この一手間が。
「ふぅ…、いただきます。」
うん、やっぱりペ〇ングの焼きそばはスパイスがよく効いてて食欲をそそる。お湯を切るのが少し遅くなって麺がちょっとやわらかい気もするけど、まぁ多少の問題は我慢。
ごくっ…ごっ…ごくっごくっ……ぷはぁ。
スパイス効いてるなら塩コショウは入れなくて良かったかな…。まぁそんなことは気にしない。私はコップの水を飲みつつ焼きそばを胃に収めていく。
ちゅる、ちゅるるる、ごっくん。
ごきゅ…ごきゅ……ぐびぐびぐび…ごく…。
超大盛りの焼きそばと合わせて水も結構いいペースでごくごく飲んでいるのでただでさえ重たいお腹がさらにズッシリと重たくなってくる。そして同時に前へ前へと突き出して膨らんでいく。
ピッチャーの3分の1くらいの水を飲んだくらいだろうか、ついに、超大盛り焼きそばは全て私のお腹の中へと入っていった。お腹はもうみぞおちから足の付け根まで膨らみに膨らんで、もう物が入るスペースは無いのではないだろうか…。いや、まだだ。まだ入る。まだ詰め込めるはず…。私は自分のまんまるに大きく、硬く、そしてどっしりと重たくなったお腹の上の方をわざと押してみた。
「んぶぅ!……ヴォァァァァア゙ア゙ップ!」
…多少汚ならしいかもしれないが、空気も一緒に飲み込んでしまう私の体質なら仕方がないことだ…。私はゲップで胃の中の空気を抜きつつ、ピッチャーの水をお腹に流し込んでいった。
どれくらい時間が経っただろうか。今、私のすぐ横には中身が空っぽになったピッチャーが転がっている。
「ふぅーっ………ふぅーっ………。」
も、もうダメ…。私のお腹にはたぶんもう米の一粒も入る余地はないだろう。仰向けにベッドに横たわりながら巨大なお腹を苦しそうに上下させているその姿は、さながら陣痛に耐えている妊婦のようである。このお腹の大きさでは、一体何人の子供を身籠っているのだろうか。
ただでさえとてつもない量の食べ物を詰め込んだと言うのにその上に水分を大量にがぶがぶ飲んだため、中の食べ物が水を吸って膨張したのだろう。お腹がパンパンに張り過ぎて、動くことはおろかしゃべることも辛く感じる。私のすぐ上には超重量のお腹がででーんとのしかかって来ているので、金縛りに遭ったかのように動けない。
ああ…あらかじめ枕元にメジャーを置いておくべきだったなあ…。ここまで大きく、たくましく、そして美しく膨らんだお腹はそうそうお目に掛かれないだろう。
Tシャツは完全にめくれ上がり、下乳がチラリと見えてしまっている。大きくて豊満なバストであるが、今はそのすぐ下に広がる巨大な太鼓腹が見るものの視線を一ヶ所に集める。
パンツに到っては、せり出したお腹に押しやられてずり下がり半分脱げてしまっていて、マイクロビキニのようになっている。
「ふぅーっ………ふぅーっ………。」
私は自分のお腹を優しく撫でる。パツパツに張ったお腹の皮膚は、伸びきった皮下脂肪に包まれてスベスベとした感触だ。
気持ちいい……幸せぇ……。
なんだかこの感触はいつまででも触っていたくなる。そして触られている私自身も病みつきになりそうな感触だ。私はしばらく自分のお腹を愛撫していたが、唐突に自分のお腹を叩いてみた。
ドンッッッ ドンッッッ ドンッッッ
う~ん、何だか大砲を撃ったときに出てきそうな、重厚で力強い音と響きだ。和太鼓の演奏に混ざっても全くおかしくないんじゃないだろうか。私が打つ手に全く動じずびくともしないそのさまは、まさに全てを受け入れ抱擁する母なる大地のようでもあった。
「……ご、ごちそうさまでしたぁ…うぷ。」
お腹が破裂寸前まで膨らんですごく苦しくて辛いのに気持ちいい…。私はこの不思議な幸福感と達成感に包まれながら、珍しく充実した気分で眠りについた。